おくすりについて

不眠症の治療に用いられる睡眠薬について


  • 眠れない時のお薬といえば、「睡眠薬」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
    実は睡眠薬にも色々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。
    それぞれの睡眠薬の特徴について紹介します。

    Ⅰ.ベンゾジアゼピン系睡眠薬

    ベンゾジアゼピン系睡眠薬は1960年頃より使われるようになってきた睡眠薬です。
    古いお薬ですが、効果の良さの副作用の少なさのバランスが良く、現在でも広く用いられています。
    ベンゾジアゼピン系は脳神経細胞にあるGABA-A受容体に結合することでGABA-A受容体の作用を強めます。
    GABA-A受容体は「抑制系受容体」と呼ばれており、脳のはたらきを抑制する方向にはたらきます。 そのためGABA-A受容体のはたらきが強められると眠気を感じるというわけです。
    より具体的に見ていくと、GABA-A受容体を刺激すると、
    •抗不安作用(不安を和らげる)
    •催眠作用(眠らせる)
    •筋弛緩作用(筋肉の緊張を取る)
    •抗けいれん作用(けいれんを抑える)
    の4つの作用を発揮される事が知られています。ベンゾジアゼピン系はこの4つの作用をもっています。
    ベンゾジアゼピン系のうち、特に「催眠作用」に優れるベンゾジアゼピン系を「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼びます。
    効果はしっかりとしており、頼れるお薬です。また種類も豊富で、即効性のあるもの、長時間効くものなど、自分の症状にあったお薬を見つけやすいというのもメリットです。 副作用はあるものの、命に関わるような重篤な副作用は生じません。
    ただし筋弛緩作用によるふらつき、催眠作用による眠気や倦怠感などが生じる可能性はあります。また長期的には耐性や依存性が生じる事があります。 【ベンゾジアゼピン系睡眠薬一覧】
    ・ハルシオン(一般名:トリアゾラム)
    ・レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)
    ・リスミー(一般名:リルマザホン)
    ・エバミール/ロラメット(一般名:ロルメタゼパム)
    ・サイレース/ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)
    ・ネルボン/ベンザリン(一般名:ニトラゼパム)
    ・ユーロジン(一般名:エスタゾラム)
    ・ドラール(一般名:クアゼパム)
    ・ダルメート(一般名:フルラゼパム)

    【ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴】
    効果の強さ:★★★☆☆
    副作用の多さ:★★★☆☆
    耐性・依存性:★★☆☆☆

    Ⅱ.非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

    非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は1980年ごろより使われるようになったお薬で、ベンゾジアゼピン系の改良型になります。
    ベンゾジアゼピン系は脳神経細胞のGABA-A受容体に作用しますが、GABA-A受容体にはω(オメガ)受容体という部位があり、 ω受容体にはω1受容体とω2受容体があります。 ベンゾジアゼピン系はω1、ω2の両方に作用しますが、 非ベンゾジアゼピン系はω1受容体にしか作用しないというのが両者の違いです。
    実はω受容体のうち、睡眠に関係しているのは主にω1なのです。ω2はというと、不安を抑える抗不安作用、筋肉を緩める筋弛緩作用、けいれんを抑える抗けいれん作用に関係しています。 つまり睡眠薬として使うのであれば、ω1にだけ作用してくれた方が好都合で、そうする事により眠らせる作用はそのままで、筋弛緩作用によるふらつきの副作用などを軽減する事ができます。 非ベンゾジアゼピン系の特徴は、眠らせる作用はベンゾジアゼピン系と同等の力を持っていながら、副作用のふらつきを軽減させている事です。また耐性や依存性もベンゾジアゼピン系よりも軽減されているのではないかという見解もあります。 作用時間が短めのものが多いため、日中にまで眠気や倦怠感が持ち越しにくいというメリットもあります。
    デメリットは作用時間が短いものが多いため、中途覚醒タイプ(夜中に何度も目覚めてしまう不眠)にはあまり向かないこと、そしてベンゾジアゼピン系と比べると薬価が高いという点が挙げられます。 【非ベンゾジアゼピン系睡眠薬一覧】
    ・アモバン(一般名:ゾピクロン)
    ・マイスリー(一般名:ゾルピデム)
    ・ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)

    【非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴】
    効果の強さ:★★★☆☆
    副作用の多さ:★★☆☆☆
    耐性・依存性:★★☆☆☆

    Ⅲ.メラトニン受容体作動薬

    メラトニン受容体作動薬は2010年から使われるようになった睡眠薬です。
    このお薬は、強制的に脳に鎮静をかけるのではなく、自然な眠りを提供してくれる安全性に優れるお薬になります。
    私たちが普段、夜に自然と眠くなるのは、「メラトニン」という物質が関係しています。周囲が暗くなると、 脳からメラトニンが分泌され、メラトニン受容体にくっつく事で私たちは眠気を感じると考えられています。
    メラトニン受容体作動薬は、メラトニン受容体を刺激する事で眠気を感じさせるお薬で、私たちが本来眠気を感じる時のような効き方をするため、 自然な眠気を感じられます。
    メリットは自然に眠気を感じることと、安全性が高い事です。日中のふらつきや眠気、倦怠感などはほとんど生じません。
    デメリットとしては効果の弱さが挙げられます。「全く効かない」と訴える患者さんもいらっしゃいます。 またすぐに効果を感じられない場合もあり、1か月ほど服用を続ける事で少しずつ睡眠が改善してくることもあります。

    【メラトニン受容体作動薬一覧】
    ・ロゼレム(一般名:ラメルテオン)

    【メラトニン受容体作動薬の特徴】
    効果の強さ:★☆☆☆☆
    副作用の多さ:★☆☆☆☆
    耐性・依存性:☆☆☆☆☆

    Ⅳ.オレキシン受容体拮抗薬

    オレキシン受容体拮抗薬は2014年に発売された睡眠薬です。
    オレキシンという脳の覚醒に関係する物質のはたらきをブロックする作用を持ちます。オレキシンは覚醒に関係しているため、ブロックされれば覚醒しにくくなり、眠くなるという事です。
    オレキシン受容体拮抗薬は、ベンゾジアゼピン系ほどではないにせよ、ある程度しっかりとした効果が得られます。また大きな副作用もなく、日中の眠気・ふらつきも生じにくいと考えられています。
    耐性・依存性もない(あるいは極めて少ない)と考えられています。

    【オレキシン受容体拮抗薬一覧】
    ・ベルソムラ(一般名:スボレキサント)

    【オレキシン受容体拮抗薬の特徴】
    効果の強さ:★★☆☆☆
    副作用の多さ:★☆☆☆☆
    耐性・依存性:☆☆☆☆☆

    Ⅴ.バルビツール酸系睡眠薬

    バルビツール酸系は1950年頃より使われ始めたもっとも古い睡眠薬です。
    現在でも何種類かは発売されていますが、基本的には使用は推奨されていません。その理由は副作用の頻度が多く、時に重篤な副作用が生じるためです。
    バルビツール酸系は、強力な催眠作用があります。そのため重度の不眠症の方が欲しがるお薬でもありますが、極力バルビツール酸系は処方されません。
    眠気・ふらつき・倦怠感といった副作用も生じやすく、時に呼吸が止まってしまったり、重篤な不整脈が生じるリスクもあります。
    また耐性や依存性の生じやすいというデメリットもあり、バルビツール酸系は基本的には使うべきではない睡眠薬になります。

    【バルビツール酸系睡眠薬一覧】
    ・ベゲタミンA
    ・ベゲタミンB
    ・ラボナ(一般名:ペントバルビタール)
    ・イソミタール(一般名:アモバルビタール)

    【バルビツール酸系睡眠薬の特徴】
    効果の強さ:★★★★★
    副作用の多さ:★★★★★
    耐性・依存性:★★★★★