■不眠症について


睡眠薬以外の不眠症の治療薬

不眠症の治療薬と言えば睡眠薬ですが、実は睡眠薬以外にも睡眠に効果のあるお薬はあります。
不眠症治療には時には睡眠薬以外のお薬を用いる事もあります。
どのようなお薬があるのかを紹介していきます。
  Ⅰ.抗うつ剤
抗うつ剤は基本的にはうつ病や不安障害の治療薬として用いられます。
しかし抗うつ剤の中には眠気をもよおすものや、眠りを深くする作用を持つものもあり、このような抗うつ剤は時に不眠症の治療薬としても使われます。 不眠に対して用いられる代表的な抗うつ剤には、古いものから、
•四環系抗うつ剤
•SARI(5HT2A受容体遮断薬)
•NaSSA
などがあります。
一般的に抗うつ剤は、睡眠薬のように即効性に優れるものは少なく、ゆっくり効き、睡眠の質を改善させるような作用をもたらします。 そのため「寝付けない」という入眠障害にはあまり向かず、中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害などに用いられます。 【不眠に用いられる代表的な抗うつ剤】
・テトラミド(一般名:ミアンセリン)
・ルジオミール(一般名:マプロチリン)
・デジレル/レスリン(一般名:トラゾドン)
・リフレックス/レメロン(一般名:ミルタザピン)

  Ⅱ.抗精神病薬
抗精神病薬は、主に統合失調症の方に用いる治療薬の事です。また近年では双極性障害(躁うつ病)も一部統合失調症と共通の病態であると考えられるようになり、双極性障害の治療薬としても用いられるようにもなっています。
抗精神病薬は幻覚や妄想、興奮などを改善させる作用が主ですが、脳を鎮静させることで眠りを導く作用を持つものもあります。
不眠に対して用いられる代表的な抗精神病薬には、古いものから、
•フェノチアジン系抗精神病薬
•MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)
などがあります。
フェノチアジン系抗精神病薬は1950年ごろに開発された初の抗精神病薬である「コントミン(一般名:クロルプロマジン)」が代表的です。
幻覚・妄想などを改善させる作用の他、心身に鎮静をさせる作用に優れ、睡眠も導きます。
しかし古いお薬であり、副作用には注意が必要です。錐体外路症状と呼ばれる手足の震えや筋肉の固まりといった神経症状が生じる事があります。
またホルモンバランスを崩してしまったり(高プロラクチン血症)、稀ではありますが重篤な不整脈が生じたりするリスクもあります。
MARTAはフェノチアジン系の改良型というイメージで、幻覚・妄想などの症状を改善させる作用の他、心身を鎮静する作用に優れるという点が共通しています。
異なるのは重篤な副作用が生じる頻度が低下しているという点で、フェノチアジン系と比べると安全性に優れます。ただしフェノチアジン系よりも体重増加や血糖値の上昇などメタボリックな副作用が多いのが欠点です。
このような抗精神病薬が不眠の改善に効果的なのは事実ですが、本来は病的に生じている幻覚・妄想を抑え込む強力なお薬であるため、安易に使用すべきではありません。 不眠に用いる際は、使用するメリットとデメリットをしっかりと見極め、本当に必要な時のみの使用にとどめるべきです。
【不眠に用いられる代表的な抗精神病薬】
・コントミン(一般名:クロルプロマジン)
・ヒルナミン/レボトミン(一般名:レボメプロマジン)
・ジプレキサ(一般名:オランザピン)
・セロクエル(一般名:クエチアピン)

  Ⅲ.漢方薬
漢方薬は様々な用途に使う事が出来ますが、精神的な作用をもたらすものも少なくありません。漢方薬の中には睡眠の改善作用が期待できるものもあります。
漢方薬は、服用する事で強制的に脳を鎮静させるようなものではありません。ゆっくりと自然に心を鎮めて、眠りを導くようなイメージです。
不眠症に用いる漢方薬は、不安や興奮といった不眠の原因となるような症状を抑える事で副次的に眠りに入りやすい状態を作るという効き方をします。
不眠症に用いられる代表的な漢方薬には、
•黄連解毒湯
•抑肝散
•加味帰脾湯
•加味逍遥散
•柴胡加竜骨牡蛎湯
•酸棗仁湯
などがあります。
漢方薬は様々な生薬が配合されているお薬であり、服用する患者さんの体質によって用いるものが異なってきます。
なので一概に「この症状にはこの漢方薬」と言えるものではなく、自分に合った漢方薬はどれなのかは専門家にしっかりと診察してもらって判断した方が良いでしょう。

市販の睡眠薬(睡眠改善薬)の効果と注意点

不眠症の治療薬は病院で医師の診察を受けて処方してもらうものです。
しかし薬局に行くと、医師の処方箋なしで買える睡眠薬も売っています。このような市販の睡眠薬は「睡眠改善薬」と呼ばれています。
睡眠改善薬は、
旅行時の時差ボケや、とても緊張するイベントの前日で眠れないなど、明らかに一時的な不眠で、大きな苦しみが生じない程度の軽いものに対して有効なお薬です。
反対に、
•眠れない日々が続いている
•不眠がある事で苦しいと感じている
という状態であれば睡眠改善薬より睡眠薬をお勧めします。
その理由は、睡眠改善薬の特徴にあります。
睡眠改善薬は、様々なものが売られていますが、これらにはすべてジフェンヒドラミンという成分が50mg含有されています。
このジフェンヒドラミンというのは「抗ヒスタミン薬」という種類で、脳を覚醒させる物質であるヒスタミンのはたらきをブロックする事によって眠気をもたらすお薬です。
医療では花粉症などのアレルギー疾患の治療薬として用いられています。花粉症のお薬を飲むと眠くなるといいますが、抗ヒスタミン薬は眠くなるという事が分かります。
ちなみにジフェンヒドラミンを含有する、病院で処方する医薬品として「レスタミン」があります。しかしレスタミンは主にアレルギー疾患の治療薬として処方され、不眠に対して処方する事はまずありません。 その理由は、レスタミンは確かに眠くなりますが、催眠作用がそこまで強くない事と眠気に対してはすぐに耐性が出来てしまう事にあります。
そのためジフェンヒドラミンを使うくらいであれば、上記で紹介した睡眠薬を使った方が治療効果が明らかに良いため、ジフェンヒドラミンは不眠症に対しては処方されないのです。
数日の軽い不眠症状に限った使用であれば悪くはありませんが、それ以外であれば漫然と睡眠改善薬を使うのはお勧めできません。そうするくらいであれば睡眠薬などを検討した方が良いでしょう。
ちなみに病院で処方される「レスタミン(ジフェンヒドラミン)」は50mgで29円(3割負担だと8.7円)です。 対して睡眠改善薬はジフェンヒドラミン50mg含有で1錠120円ほどします。同じ成分ですが、価格もかなり異なってくるのです。